中小企業必見!脱炭素経営における課題とは?解決策とともに徹底解説
- 脱炭素経営
近年、脱炭素への取り組みは大企業やグローバル企業といった限られた企業だけではなく、全国に多数存在する中小企業にとってもますます重要になってきています。
脱炭素の重要性が高まる一方、中小企業の経営者にとってはそれらに費やす時間や人、お金などの多くの課題に直面することもまた事実です。
この記事では、それらのような中小企業が抱える具体的な課題とその解決策、さらにはそもそも「どうして脱炭素に取り組まなければならないのか」まで徹底的に紹介・解説していきます。
中小企業がどのように脱炭素化・脱炭素経営を実現し、持続可能な成長を達成できるのか、一緒にかなえていきましょう。
中小企業が直面する脱炭素の課題は多岐にわたります
「脱炭素…、やりたくてもできない」と感じている中小企業は、全国的に見ても多いようです。
全国の中小企業を対象にして行われた調査によると、過半数の中小企業経営者が「脱炭素に関する、今以上の取り組みが必要だ」と感じているそうです。脱炭素の重要性や必要性は、やはり多くの企業が感じている課題なのですね。
いったい、何が課題・障壁となって中小企業が「脱炭素したくてもできない」状況が作られてしまっているのでしょうか?
先ほどと同じ調査の中で、脱炭素経営に取り組むときに経営者が感じている課題についても調査されています。
その調査によると、予想以上に多様な原因によって脱炭素経営が足止めされていることが分かりました。
出典:フォーバル GDXリサーチ研究所 「中小企業の脱炭素経営に関する実態調査」
効果が分からない
最も多くの経営者が感じている課題は、「脱炭素経営の取り組みがどのような効果をもたらすか、分かりづらい」というものだそうです。
いかがでしょうか、この記事を読んでいる方の中でも同じように感じている方も多いのではないでしょうか?
脱炭素への取り組みは、直接「業績が〇倍になった」「取引件数が〇件増えた」といった具体的な成果につながりにくいものです。成果が出たとしても「本当に脱炭素への取り組みが要因なのか?」といった疑念も浮かんで切ってしまうでしょう。
お金をかけて取り組んでいるのにその成果が見えてこないといった不安を中小企業の経営者は抱えているのです。
取り組み方が分からない
「脱炭素の取り組みが大事になことはわかっているけど、何から始めればよいか分からない」ということも、経営者にとっては大きな悩みとなっています。
それもそのはずです。「脱炭素」という言葉はここ数年で出てきたものですからね。
特に中小企業は大企業やグローバル企業と比べて、脱炭素に割くことのできる手間や時間、人材が限られています。
どのように始めるべきか、どのようなステップで進めていくかが分からなければ、いくら意欲があっても始めようがありません。
誰かに聞きたくても、社内にも社外の周りにも詳しい人がおらず「何も分からない」「誰にも聞けない」という状況に陥っている中小企業は数多く存在しています。
費用がかかる
取り組み方がなんとなくわかり、いざ開始しようとしたときに次にやってくる課題は費用面の課題です。
脱炭素への取り組みには、先行投資がつきものです。例えば、省エネ設備の導入や再生可能エネルギーの利用には、相応の費用がかかります。
省エネ設備による電気料金削減など、もちろん投資に対するリターンはあるはずです。
しかし、いずれ投資金額が回収できることが分かっていても、大きな初期投資を必要とする取り組みにはなかなか手が出せない、というのが中小企業の本音ではないでしょうか。
時間がかかる
脱炭素は、一朝一夕に実現できるものではありません。何年、何十年先の目標に向かって取り組みを続けなければなりません。
日々の業務に追われる中小企業にとっては、本業から逸れた脱炭素活動に時間を使うことはとても困難なことだと思います。
無理して脱炭素に取り組もうとすると、その分従業員に負担を強いることになってしまいます。
人材がいない
先ほども少し出ましたが、社内に脱炭素に関する専門知識を持つ人材がいない、ということもちゅうしょうきぎょうにとっては大きな課題です。
脱炭素には気候変動やCO2排出といった専門的な知識と、その知識を使って脱炭素に取り組むという経験が必要です。
大企業ならば人材確保は比較的やりやすいかもしれませんが、中小企業の限られた人材の中でそのような専門知識を持った人材を確保することは、かなりハードルが高いですね。かといって、今いる社員に脱炭素のスキルを新たに習得させることにも、教育や訓練などに時間もコストもかかってしまいます。
このように、脱炭素に取り組むためには、これらの課題を一つずつクリアしていかなければなりません。
これらの課題は解決できます!
これまで、主に中小企業が直面する様々な課題についてご紹介してきました。
しかし、これらの課題は決して乗り越えられない壁ではありません!
ここからご紹介する3つの具体的な解決策に取り組むことで、効果的な脱炭素の取り組みを実現できます!
解決策① デジタルサービスを利用する
昨今では、CO2算定や削減、エネルギーマネジメントなど、企業の脱炭素を支援するためのサービスが数多く出てきています。これらは、「時間的課題」「人的課題」を解決する助けになってくれることでしょう!
出典:LiB CONSULTING 「脱炭素ソリューションカオスマップ」2022年度版を公開!
https://www.libcon.co.jp/mobility/download/detail_xm9/
特に、企業や自治体のCO2排出量を自動算定するツールは、近年急増しています。これらのサービスを用いることで、データを集める・数値をエクセル入力する・算定に必要な資料を探す…などといった手間を大幅に削減することができます。
手間がかからないということは当然、その業務に従事する人の負担も減らすことができますよね。私の会社でも、CO2排出量算定ツールを導入してからは、毎月3人で行っていた作業を1人でできるようになり、さらに作業時間をいままでの1/10に削減することができました!
また、CO2排出量算定ツールには、脱炭素の専門家がアドバイスしてくれるサービスが付いていることもあります。専門家にアドバイスをもらうことで、会社の脱炭素経営の方針を立てることもしやすくなりますね。
「脱炭素を始めてみたけど、何をどうすればいいか分からない…」といった経営者にとっては、これ以上ないサービスだと思いませんか?
解決策② 補助金を活用する
「脱炭素経営に取り組めるほど、お金の余裕がない」という課題を持つ中小企業のみなさまには、国や自治体が発表している様々な補助金を活用することをオススメします。
これらを活用することで、省エネ設備購入などの脱炭素に必要な初期投資を大幅に軽減することができます。
いくつかの代表的な補助金をご紹介しますので、ぜひ参考にしてください!
省エネルギー投資促進・需要家構造転換支援事業費補助金
資源エネルギー庁が行い、一般社団法人環境共創イニシアチブによって運営されている補助金です。
LEDや省エネシステムを新たに導入するときに、導入費用の一部を負担してくれます。
「工場・事業場型」「電化・脱炭素燃転型」「エネルギー需要最適化型」に分類されています。
特に2つ目の「電化・脱炭素燃転型」は、ヒートポンプや高性能ボイラーなどの脱炭素経営を促進する設備に特化している補助金です。
URL:https://syouenehojyokin.sii.or.jp/124business/
需要家主導太陽光発電導入促進事業
資源エネルギー庁から発せられ、JPEA太陽光発電促進センターによって運営されている補助金です。
企業がPPA(太陽光発電の第三者所有モデル)事業を行うときの初期設備投資の費用を一部負担してくれます。
初期設備投資とは例えば、太陽光パネル費用や設置工事の費用が挙げられます。
この補助金においては、「電気を作る会社(発電事業者)」と「電気を売る会社(小売電気事業者)」、そして「電気を使う会社(需要家)」が一体となって取り組むことが必須となります。
それぞれの会社が相互に協力し合い、太陽光発電の普及に貢献していきましょう。
CEV補助金
経済産業省が行い、次世代自動車振興センターによって運営されている補助金です。
電気自動車や燃料自動車など、低炭素車両を購入するときに、費用の一部を負担してくれるものです。
それぞれの自治体が提供している他の補助金とも併用できるので、上手に使ってみましょう。
URL:https://www.cev-pc.or.jp/#no01
最近では、補助金獲得の支援をサービスとして提供している企業もあります。
脱炭素への取り組みにかけられる予算を予め決めておいて、一度相談してみるのもいいかもしれませんね。
中小企業が脱炭素に取り組む理由
ここまで、企業が抱える課題とその解決策をご紹介してきました。でも、どれも解決するのは簡単ではなさそうですよね…
では、そもそもなぜ、このような大変な思いをしてまで脱炭素に取り組む必要があるのでしょうか?
もちろん、「地球環境を守るため」という大きな目的はありますが、それだけではありません。
実は脱炭素への取り組みは企業の成長にもつながるのです。ここからは主な3つの理由についてご紹介していきます。
大企業との取引で優位性を構築できます
近年、株式市場に上場しているような大きな企業は、自社だけでなく取引先の企業にも脱炭素を求めるようになってきています。
例えば、日本を代表する企業のひとつであるパナソニック株式会社は、サプライチェーン全体で協力してCO2排出量を削減しようと取り組んでいます。
具体的には、パナソニック社で「環境基本方針」を作成し、この方針に賛同する商品や部品を提供してくれる取引先との関係をより密接にしようとしているのです。
取引先の脱炭素化を推し進めることによって、自社に関わるサプライチェーン全体の脱炭素化を重視するようになってきました。
環境に優しい(environmental friendlyなんて言ったりしますが…)商品や部品を製造している企業や会社全体としてCO2削減に取り組んでいる企業は大企業から高く評価され、取引のチャンスが増えていくでしょう。
一方で、脱炭素に無関心な企業は大手企業を含む取引企業との関係が打ち切られる将来が訪れてしまうかもしれませんよ…
「脱炭素くらいで、そんなこと起こるわけない」と思っていませんか?
実際アメリカのApple社では、取引先に「100%再生可能エネルギーの使用義務化」を始めました。2024年7月、つい最近の話です。
出典:日経GX Appleの再エネ100%、要請から義務化に
https://www.nikkei.com/prime/gx/article/DGXZQOGN290BU0Z20C24A5000000
今はまだ一部の最大手企業だけの話ではありますが、今後はこの流れが全世界的に広がるのではないでしょうか。企業にとって、取引先を失うことはかなり大きな問題ですよね。
そのため、脱炭素に取り組まない企業は、自社の存在さえ危うくなるかもしれません。
脱炭素に取り組むことは、自社と取引先企業との関係をより強くし、持続的な成長を実現するための重要な戦略なのです。
投資家や金融機関からの評価も向上します
中小企業の脱炭素化に注目しているのは大企業だけではありません。
ESG投資(企業の環境・社会・ガバナンスへの取り組みを評価して行う投資)が広がる中で、投資家や金融機関も企業がどれだけ脱炭素化に取り組んでいるかを重視するようになってきています。
脱炭素に積極的な企業は、これからの社会ニーズにこたえ続けることができる企業だと判断され、投資家からの信頼をより得ることができるようになるのです。
例えば、2024年4月、新潟県の第四北越銀行は、株式会社雪国まいたけと「SDGsリンク・ローン」の契約を結びました。この契約ではCO2排出量の削減目標を達成すると金利が下がる、という特典が付いています。
つまり、脱炭素に積極的に取り組んでいるほど低い金利で資金を借りることができるのです。
雪国まいたけ社はこのローンで25億円の融資を受けました。
このように、脱炭素に取り組む樹魚は金融面でも有利になります!
参考:株式会社雪国まいたけ 「SDGsリンク・ローン」の契約締結について
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20240402565098/
一方で、先ほどと似た内容になりますが、脱炭素に消極的な企業は、投資家や金融機関から見放されてしまうかもしれません。資金調達が難しくなるほど、事業の継続・拡大は難しくなってしまうでしょう。
企業にとっての脱炭素の重要性を感じてもらえるのではないでしょうか?
これからのニーズに適した人材の獲得・育成
また、企業に所属する人材の面においても脱炭素への取り組みは重要な意味を持ちます。脱炭素に取り組むことで、より優秀な人材を獲得できるチャンスが増えていくかもしれません。
昨今では、大学生を中心に、学生の間でも環境や脱炭素に興味関心を持つ人が増えています。この関心はもちろん、就職活動時にも及びます。
ある調査によると、就職先を選ぶときに「企業の環境対策」を比較項目に上げる学生は70%を超えるとか…
就活生たちは、単に給料や福利厚生だけでなく、企業の社会的責任や持続可能性にも注目するようになってきているのです。
そのため、中小企業が優秀な人材を獲得するためには、脱炭素化への取り組みを積極的に行い、それを学生に対してアピールすることが重要になっていきます。
また、企業内部においては、脱炭素化への取り組みは従業員の意識向上にもつながります。
企業全体で脱炭素目標を立て、おsの達成のために企業全体で活動するとなると、企業だけでなく、まわrの地域社会、地球全体により影響を与えているという実感を持つことができます。
環境意識や社会への貢献意識が高まることで、企業全体の活性化にもつながっていくでしょう。
このように、脱炭素化に取り組むことは、企業の「仕事・お金・人」の面でプラスに働きます。これらのプラスが企業としての持続可能性を後押しするのです。
さあ皆さんも、小さなことからでも構いません。脱炭素の取り組みを始めてみましょう。
中小企業の脱炭素 今後の展望は?
これまでお伝えしたように、企業にとって目下の課題となっている脱炭素経営ですが、今後はさらにその重要性が大きくなり、新たな技術や支援制度が生まれたりと、中小企業においてもより具体的な取り組みを進めることが求められていくでしょう。
技術革新が脱炭素を加速させる
近年、脱炭素化に向けた技術革新は急速に歩みを進めています。新たな再生可能エネルギー発電の開発や発電効率の向上、蓄電池の高性能化・大規模化、新エネルギーの実用化など、企業が脱炭素に取り組むための技術的な選択肢はどんどん広がっています。
特に、再生可能エネルギーの利用は、どの企業も比較的簡単に取り組むことができる内容になってきました。
従来は導入コストが高く、中小企業にとっては取り組みにくいものでしたが、PPAなどによって、初期コストを抑えて再生可能エネルギー電気を使うことができるようになってきています。
新たなエネルギーの実用化も近年では盛んにおこなわれています。主なものとしては、水素やアンモニアがありますね。
これらは地球の大気中に多く存在し、ほとんど「無限」の資源といってもいいでしょう。これをエネルギーとして利用し、発電などに使うことができれば、多くの場面での脱炭素化が期待できます。
例えば、製品を製造するエネルギーの脱炭素化、燃料電池自動車などその効果は多岐にわたります。
未だ研究段階の技術・エネルギーも多いですが、この先、誰もがこれらの技術を使えるようになる未来が訪れるかもしれませんね。
政府からの脱炭素要請の厳格化
また、政府から企業への脱炭素要請も今後強まっていくでしょう。
現状、一定の基準を満たした規模の大きな企業に対して温室効果ガス排出量の報告が義務付けられています。そして2024年2月、東京証券取引所プライム市場上場企業の全てに温室効果ガス排出量の開示を義務付ける法案を検討し始めています。
このように、温室効果ガス排出量の開示など、脱炭素への取り組みを求められる企業はどんどん多くなっていきます。
今のところは上場企業などの大企業に限られていますが、数年後には「全国の全ての企業に義務化」することになるかもしれません。
そのため、企業は自社の事業活動に応じた取り組みを今のうちから検討し、政府の要請に応えていく必要があります。特に、中小企業においては要請されてかのスタートでは間に合いません。
今のうちから準備をはじめ、要請に対して迅速に対応できるかどうかが今後のカギとなっていくでしょう。
中小企業でも、今から取り組めることはあります!一つずつ、できることから始めてみましょう。
まとめ
「脱炭素、何から始めたらよいか分からない」という悩みを抱えている経営者はあなただけではありません。
多くの中小企業経営者は脱炭素への取り組みに悩みや課題を抱えているのです。
そのなかでも、中小企業が脱炭素化に向けて一歩ずつ取り組んでいくことが重要です。そう、少しずつでもいいのです。
補助金の活用や専門家のアドバイスを受けながら、自社の状況に合わせた最適な対策を検討し、前に進んでいきましょう!
中小企業向けCO2見える化サービス『Carbon Vision』開発メンバー
環境省認定制度『脱炭素アドバイザー ベーシック(GX検定ベーシック)』、『GX検定アドバンスト』資格保有
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